灰色カビ病の発生は、畑に残った農作物の残さの感染した一部から始まります。残さに残った菌糸体は、春先に気温が上昇すると休眠状態から目覚めます。明るい光が当たると、菌糸は分生子柄(ぶんせいしへい)とよばれるものを形成しはじめます。この分生子柄の先につくられた分生子という胞子は空気中をただよって移動し、他の植物の葉や茎に着床することがあります。
花に感染した場合、最初のうちは症状が見られません。クロロシス-感染した部位のまわりは茶色く湿ったように見える細胞 –は、灰色カビ病が発生が疑われる症状のひとつです。花びらに、フチがこげ茶で白く色が抜けた斑点がたくさん出た場合も、カビに感染した可能性を示します。
ボトリチス・シネレア菌に感染した植物の部分を、放置せずに取り除くことがとても重要です。感染した部分は、ただちに取りのぞいてください。
ほんのわずか触れただけで胞子が空気中をただようので、感染した植物を他の植物と接触させないことが最も重要なポイントです。放出された胞子が健康なプラントに付着して感染が拡大します。室内栽培では、葉、花や果実の周辺が高湿度にならないよう、十分に換気するよう心がけてください。屋外では、作物が雨に濡れないように、簡易ビニールハウスやポリトンネルなどを設置して 雨除けの対策をするとよいでしょう。
また、毛虫などの害虫が植物の表面を守るクチクラ層を食害すると、B・シレネア菌が細胞に侵入しやすくなってしまうため、害虫対策も必要です。害虫に食害されたプラントは感染リスクが非常に高くなります。B・シレネアの胞子は、アザミウマのような害虫によって運ばれて拡大します。
B.シネレアに拮抗する数種の微生物が、多種多様な作物において防除効果があることがわかっています。クロノスタキス・ロゼア(=グリオクラディウム・ロゼウム)は、B・シネレアの胞子の生成を妨げる働きがあり、感染拡大を防ぎます。数種類の線虫もまた、B・シネレアへの防除に利用されています。
B・シネレアの発生や感染拡大を防止する効果のある、さまざまな植物の抽出成分が配合された資材が利用できます。例えばタイム、柑橘種子、オレガノ、ミント、ガーリックやペッパーの抽出エキスに高い効果があります。